「ここは、忘れられた島なのです!」
語気を強めて、解説したのは軍艦島を世界遺産にする会の理事長。

軍艦島 全景

見るものを魅了して止まない、その圧倒的な迫力。観光スポットと化した端島、通称軍艦島は、ほんの37年前まで人々の営みのある”生きた島”だった。国のエネルギー政策の転換で、突然故郷を追われた元島民である、理事長の魂のこもった解説に、集まった人たちの空気は一瞬にして張りつめた。

昨年末、念願だった軍艦島へ行ってきた。テレビや写真で目にする、殆ど手を入れられることなく、退廃した人工物の島は、昔から一度行ってみたい場所だった。軍艦島へ向かうために使ったのは、同僚から教えてもらったこちらのツアー。

■軍艦島クルーズ http://gunkanjima-cruise.jp/
サイト上から簡単に予約できる。

長崎港の船着き場近くの事務所にて誓約書にサインし、その後、BLACK DIAMOND号で出発。まずは高島へ。道中も三菱造船所や、橋などかなり迫力のある景色が広がっていた。

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最初に上陸した高島は、炭鉱島の親的存在で、グラバー商会のトーマス・グラバーが石炭ビジネスに乗り出し、次いで岩崎弥太郎が引き継いだ炭坑の島の中でも中心的な存在だったとのこと。

最盛期には、周囲僅か6.4kmの島内に約20,000人が暮らし、小学校には3000名の児童がいたというので驚いた。

この高島では、石炭資料館、軍艦島の1/100の模型。そして、岩崎弥太郎像を見学することができた。1/100の模型は、総工費1,000万円をかけて作成されたとのこと。その説明をしてくれたのが、元々端島の住民だった軍艦島を世界遺産にする会の理事長

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「軍艦島は最初っから廃墟だった訳じゃない。37年前まで人が生活していた島。
日本の近代化に貢献しながらも、国策によって見捨てられた島です!」
と語気を強めて説明。

聞く耳半分で写真を撮っている人たちが、一斉に撮影の手を止めていた。高島を後にして、ようやく端島へ向かう。

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▲右手億に見えるのが小中学校
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▲最も眺めが良いところに立っていたのは、三菱社員のアパート。この屋上がデートスポットだったのだとか

この時期でも月の半分は上陸できないそうだが、この日は波も非常に穏やかで無事上陸できた。上陸すると、島の南側を中心に見学コースが整備されていた。整備されていて見やすいが、動けるエリアは非常に限られており、もっといろいろ見せて欲しかった。というのが正直な感想。

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一番寄れてこのレベル

上陸して見える範囲は非常に限定されているが、最後の理事長の「この島は日本の未来です。資源は有限です。」というメッセージが非常に印象的だった。

端島は37年前突然閉山が決まった。そして島民に残されたのはたったの3ヶ月。閉山から3ヶ月でみなバラバラになっていったという。まるで何百年、何千年か経っているのではないかと思えるくらい朽ち果てていたが、まだたったの37年前の出来事。

考えてみると、近代の建物の多くは、人が立ち退いた後は取り壊され、また新しい建物が建つか更地に戻される。ところがこの端島は、国から一方的に立ち退きを迫られ一斉に人がいなくなった。なぜ取り壊されなかったかは不明だが、一斉に人がいなくなったことで、時が完全に止まり、現在の佇まいを作り上げている。

未整備のまま取り残された人工物が、風雨にされされ、ただ時間の経過と共に朽ちていっていくとこうなる。という見本となっている端島は、資源を求めて争う人間の未来の姿を象徴しているということだろう。

理事長が語気を強めて説明したのは、「興味で見に来た人が見ている景色」と「そこに暮らした人達が見ていた景色」は全然違って、可能な限り後者のリアルを伝えたかったんだろうと感じた。

我々興味で見に来た人には、昔の暮らしは白黒写真でしか知り得ないが、彼らにはかけがえのない思い出が刻まれた故郷だ。故郷を言われるがままに出て行かなければ行けなかった苦悩。さらに戻ることも許されなかった憤り。そんなものが入り交じっていたのかもしれない。

ただの廃墟の島として人気スポットになるではなく、そこに暮らした人々の日本発展への貢献と、故郷を追われざるを得なかった苦悩が詰まった島として、世界遺産に登録されることを願う。

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