半島を出よ 村上龍

ずっと読みたかった村上龍の長編「半島を出よ」を読みました。
上下合計900ページ以上の大作で、読み終えるのに1ヶ月以上かかってしまいまして…。
半島を出よ (上)半島を出よ (下)

北朝鮮のコマンド9人が開幕戦の福岡ドームを武力占拠し、2時間後、複葉輸送機で484人の特殊部隊が来襲、市中心部を制圧した。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗った。財政破綻し、国際的孤立を深める近未来の日本に起こった奇蹟。

読書後の感想故、ネタバレを含みますのでご注意を。

これは凄い小説でした。財政が破綻した日本。それに呼応するようにアメリカの日米同盟重視路線の転換など、話の設定が非常に緻密で、世界の情勢を含めて本当に事件が起こったとしても何の不思議もないほどリアルです。何より福岡が反乱軍に占拠される。というのがとても非日常的であり、受け入れがたい事実です。そんな受け入れがたい事実もこれは起こりえるなと思えてしまうので恐ろしい。

何もできにない日本政府に対し、世間一般でいう「普通」に生きられなかった少年達が、自由な意志で立ち上がり未曾有の国厄に挑むという設定が普通の勧善懲悪の物語と違うところで凄い。圧倒的な恐怖の中で自分の本当の姿や意思に気がつく様は、個性が消えた昨今の若者に対する強烈な警鐘になっています。

また、厳しい思想統制下での北朝鮮の人間の心理描写が非常に緻密です。人間がいかに凶器となっていくか。そして、凶器となった心にある僅かな隙が人としての本能を再起させてしまう様は、非常に重たい内容ですが読み応えがあります。

最初は、まったくどういった話なのかを知らずに読み始め、かなり読み辛い部分もありましたが、「北朝鮮に福岡が占拠される。」という設定が見えてきたあたりからは一気に小説の世界に引きずりこまれました。途中で、登場人物にどこか覚えがあるなと思って調べたら、やはり村上龍の小説の「昭和歌謡大全集」に出てきた人物が、この物語に登場していたので驚きました。
村上龍の作品は色々読みましたが、その中でも最高傑作に入る部類だと思います。映画化したらさぞかし話題になる気はしますが、微妙な話題すぎて映像として大衆に公けにするのは不可能なんではないかなと思います。

そうとう重たい作品で、人を選びそうですがこれはお勧めです。
★★★★★(最高傑作)

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