プリンセス・トヨトミ 万城目学

プリンセス・トヨトミ (文春文庫) 会計検査院の調査員が、大阪が秘める禁断の秘密に迫ってしまう。というファンタジー

タイトルがキャッチーだなと思ったことと、さらにiPadで電子書籍版が売っていたので読んでみました。万城目学を読んだは、鹿男あをによし以来2作目です。大阪についてはあまり馴染みがありませんが、それでもかなり楽しめました。大阪が全停止するって!?、プリンセス・トヨトミって何だ?という謎掛けに対する筆者の解答が非常に見事です。

以下、読書後の感想故、ネタバレを含みますのでご注意を。

■現実と紙一重のところに描かれるファンタジー

最初の方は完全に現実の世界の出来事のように話が進んでいきますが、ある部分からすっとファンタジーに入ります。そのファンタジーへ入る瞬間の転換が非常に自然でまったく違和感がありません。ちょっと前までは現実世界、でも今進んでいるのはファンタジーというのが非常に心地よい不思議な感覚として入ってきます。

■緻密に作り込まれた世界観

現実からファンタジーに転換させると、矛盾や違和感を感じることも多いのですが、前述の通り非常に自然な流れでファンタジーに突入し、かつ描かれる世界が非常に緻密に計算されています。「大阪国が存在し、豊臣の末裔を大阪中の男が極秘裏に守っている」というありえない話が、本当にありそうな出来事として展開されます。さらに最後まで読み進めると、いやとはいえおかしいでしょ…。というポイント(女性が誰も気付いていないということや旭が裏で手を回していた理由、大阪以外で公にならないこと)にもフォローがあります。疑問をちゃんと解消して終結するので、読み終わりが非常にすっきりします。

■守ってきた理由にちゃんと本質がある

単純に大阪中の男が豊臣の末裔を守る。というだけではないところも、面白いと感じた理由です。本作最大の謎である、何故大阪中の男が、このおとぎ話のような世界を信じることができるのか。という点に対し、「それは父の言葉だからだ、松平さん」という一言をもって解答しています。この一行には鳥肌だ立ちました。「亡くなっている父の意思を継ぐ」というシンプルな本質ですが、非常に重みがあり全力で納得できてしまった。

この物語を、「代々続く父親からの意思を継ぐ」というシンプルな本質から作っていったのか、「豊臣家には生き残りがいた」のどちらから紡ぎだしているのかは分かりませんが、いずれにしてもストーリーテリングとしては凄いなと思いました。いいもの読んだ!そんな気がします。

★★★★☆(傑作)